Claude Dashboards を実際に試す(Claude Motion も解説):数式パネルにしか現れなかったバグ
Claude Dashboards が公開 Wikipedia データ 88 行から何を作ったか、どの数字が元ファイルとの照合に耐えたか、そして唯一の誤りが共有ダッシュボードを見る大半の人には見えない理由。あわせて、ダッシュボードを共有したときに誰が何を見るのか、Claude Motion が動画生成モデルを使わずに動画を作る仕組みも扱います。
10 月 8 日、Anthropic は 2 つの新しいアーティファクトの種類をベータ公開しました。Claude Dashboards は、データについての質問を、データの変化に合わせて更新されるグラフのセットに変えます。各グラフの裏にあるクエリはワンクリックで確認できます。Claude Motion は、レポートや製品紹介を短いアニメーションに変えます。アニメーションは Claude がコードとして書き、MP4 で書き出せます。
動画:X に投稿された Anthropic の告知。
ローンチ投稿は数時間で 28,000 いいねを超えましたが、読んだ返信の中に実際に使ってみた報告はほとんどありませんでした。Motion は Team と Enterprise プラン限定で、Dashboards は接続済みのデータソースを前提に作られています。そこで Max プランで公開 CSV からダッシュボードを作り、出てきた数字をすべてファイルと照合しました。
グラフは正しく、モデルは予想以上に慎重でした。間違えたのは定義、つまり「ある月が完了しているかをどう判断するか」です。ダッシュボード上には何も表れていませんでした。それを示したのは各グラフの数式を一覧にしたパネルです。このパネルを用意した点は Anthropic を評価すべきでしょう。読む必要が出てくるからです。
Claude Dashboards と Claude Motion とは?
どちらもテンプレートから作るアーティファクトです。同じ仕組みが Claude の Docs、Slides、Design にも使われていて、この 3 つは同じ日に全プランでベータを終えました。
Anthropic の説明では、ダッシュボードは「Claude がグラフごとに SQL クエリを書き、データソースに対して実行します。各グラフにはクエリが表示されるので、何を数えているのか、データが最後に更新されたのはいつかを正確に確認できます」というものです。用途としては「今週の登録数が先月と比べてどうかといった、手早い探索的な質問」を挙げています。より深い分析には、ダッシュボードを Amplitude、Grafana、Hex、Mixpanel、Omni、Perplexity、PostHog、Sigma に送れます。Looker、monday.com、Tableau は近日対応とされています。Dashboards は Pro、Max、Team、Enterprise でベータ提供中です。
Motion は範囲が狭く、「コンテンツを短いアニメーションに変えます。たとえば全社会議向けの解説、取締役会資料用のアニメーション付きグラフ、顧客オンボーディング用の製品ウォークスルーなど」で、Team と Enterprise のみです。どちらも通常の利用上限にカウントされ、別料金の記載はありません。
企業にとってはデフォルト設定が重要です。管理者ガイドによると、Enterprise ではオーナーが有効にするまで両方ともオフで、Team では Motion がデフォルトでオンです。HIPAA 対応の組織でも有効にできますが、「Business Associate Agreement(BAA)の対象外なので、保護対象保健情報(PHI)は入れないでください」とされています。
Claude Dashboard はどこからデータを取得するのか?
想定されている経路はコネクタです。ローンチ記事は Amazon Redshift、BigQuery、ClickHouse、Databricks、Snowflake に加え、ほかの接続済みアプリを挙げ、例として Salesforce を出しています。Claude のディレクトリでは、この 5 つのうち 4 つがサードパーティ製の MCP コネクタで、ほかと同様に信頼できない作者です。どれにも「意図どおりに動作することを検証できません」という Anthropic の標準警告が付いています。Databricks の項目は Databricks の Genie コネクタで、これは自分で SQL を書きます。「Claude がグラフごとに SQL クエリを書く」という説明とは少し合わず、その場合に Dashboards がどちらの経路を使うのかはドキュメントに書かれていません。
生成されたクエリで真っ先に気になるのは指標の定義です。Anthropic は The New Stack に対し、Dashboards は「コネクタ経由で公開されていれば、こうしたセマンティックモデルにも対応します」と答えました。データチームがすでに管理している dbt 型の定義のことです。Claude に独自の定義を書かせず、すべてのダッシュボードにそれを強制できるかどうかは明記されていません。
告知で最も重い役割を担っている言葉は「ライブ」ですが、ドキュメントの記述は薄いままです。ローンチ記事は、ダッシュボードは「データの変化に合わせて更新されます」と書き、各グラフには最終更新時刻が表示されます。何が更新のきっかけになるのかを書いたページは見つかりませんでした。Anthropic が文書化している唯一の更新の仕組みは Claude Code のアーティファクトのドキュメントにあります。コネクタを使うページは読み込み時にデータを取得し、「一定間隔で、または閲覧者が更新ボタンを使ったときに更新できます」。レスポンスは閲覧者のブラウザにキャッシュされます。Dashboards も同じ実行環境を使っている可能性は高いものの、これは推測です。
ドキュメントが触れていないのはファイルです。ダッシュボードのチャットに CSV を貼り付ければダッシュボードができます。今回はこの方法で試しました。データはデータウェアハウスではなくアーティファクトの中に入ります。これで 2 つのことが変わり、後で触れます。このダッシュボードの数式は SQL ではなく JavaScript になり、データはダッシュボードと一緒にどこへでも移動します。
Claude Dashboards は公開 Wikipedia データから何を作ったか?
Wikimedia のページビュー API から、英語版 Wikipedia の 4 記事(Pizza、Sushi、Ramen、Taco)の月間ページビューを取得しました。人間の閲覧者のみ、期間は 2025 年 1 月からテスト当日までで、88 行です。最後の月の 2026 年 10 月は 8 日分しかデータがなく、そのことは伝えませんでした。アーティファクトのページで空のダッシュボードを開き、CSV を貼り付けて、普通のユーザーが頼みそうなことを頼みました。
I want: a line chart of all four over time, a ranking of which food got the
most attention overall, and headline numbers including the most-viewed food and
each food's change in the latest month versus the month before. Point out
anything interesting, like seasonal spikes.Opus 5.5、effort は medium で、約 4 分後にできあがったのがこれです。

Claude が作ったダッシュボード。2026 年 10 月は破線で描かれ、「to date」と表示されています。
「最新の月」という依頼は罠でしたが、Claude は自分でそれを避けました。「2026 年 10 月にはデータが約 8 日分しかないので、10 月と 9 月をそのまま比べるとすべての食べ物が 73〜79% 減に見えます。『最新の月』のタイルは代わりに 9 月と 8 月を比べています。」10 月は破線で描き、グラフのキャプションでもそう説明していました。
次に、すべての数字を CSV と照合しました。すべて正しい値でした。合計では Sushi が Pizza を 969 ビュー上回り、どちらも約 114 万。2025 年は Sushi が 22,734 差で勝ち、2026 年は Pizza が 21,765 差でリード。9 月対 8 月は Pizza が +7.1%、Ramen が −7.2%。2025 年 3 月のピークは Sushi の 99,075。Taco は 2026 年 1 月に倍増し、すぐ元に戻りました。頼んでいないことにも気づいていました。4 記事合計のビューは 2026 年 1〜9 月が 2025 年の同じ月より 23% 少なく、減少幅は Taco の 16% から Ramen の 30% まででした。原因を推測しつつ、自分の根拠の穴も明示しています。「4 つとも一緒に下がっているので、好みの変化というより Wikipedia を読む人が減ったと見ます。……ただ、どちらかでこれほど大きな減少を説明できるかは確認していません。」

ランキング、所見パネル、ピークの表。ここにある数字はすべて元ファイルと一致します。
文章のほうは、数字が支えられる範囲を超えていました。2 年分のデータしかないのに Pizza の 5 月から 6 月への落ち込みを「毎年……繰り返す唯一のパターン」と呼び、何があったか知らないまま 2025 年 3 月のスパイクと Taco の 1 月の急増を一度きりのニュース的な出来事と決めつけ、Pizza が「1 か月ほどで」合計でも首位に立つと予測しました。注意深い読者なら 3 つとも割り引いて読むでしょう。共有ダッシュボードを流し読みする人はそうしないかもしれません。
Claude Dashboard はどこで間違えたのか?
どのグラフにも表れない場所です。グラフとタイルはそれぞれ名前の付いたソースから作られ、Sources パネルにその一覧があります。データウェアハウスではなくファイルを使ったので、このダッシュボードにはデータファイルが 1 つと計算ソースが 6 つありました。それぞれに平易な説明、数式、結果が付いています。

「最新の月」タイルの元になるソースの説明は「終わった最後の月と、その前の月の比較。今月はまだ終わっていないので除外」でした。その数式は new Date() で始まっていました。どの月が完了しているかを、データではなく今日の日付で判断していたのです。

データが入り続けるデータウェアハウスにつながったダッシュボードなら、これは正しいルールです。今回のファイルでは違います。ファイルは 10 月 8 日で止まったスナップショットだからです。Claude はタイルが「自動で更新される」と言っていました。そこで、新しいファイルを一度も送らなかったら 11 月 2 日に何が表示されるかを聞きました。
On November 2 the tiles will be wrong. What I told you was misleading,
because the dashboard can't tell that October's data stops on about the 8th.その日に開いたら何が壊れるかを挙げてくれました。タイルは 10 月の 8 日分と 9 月まるごとを比べ、すべての食べ物が 73% から 79% 減と表示する。破線の部分が実線になる。前年比は −23% ではなく −28% になる。修正案として data_through 列と、目に見える「Data through Oct 8」の行を提案し、適用するか尋ねてきました。適用しなかったので、この修正は未検証です。
良い回答ですが、数式を読んで質問したからこそ出てきたものです。データの中に見えていた途中までの月には、モデルはうまく対処しました。しかし静的なファイルの上にライブデータ向けのロジックを書き、いま見ているのがどちらなのかはページのどこにも書かれていません。
以前、ここでは見せない非公開のアナリティクスのエクスポートで試したときにも、似たパターンがありました。エクスポートで「views」と表示されていた列は、実際には訪問者数でした。Claude は 3 つの表のうち 2 つでその食い違いを指摘し、3 つ目では見逃し、見出しのパーセンテージを単位の混ざった数字で組み立てました。私が一文書いただけで数字を直し、すべての列名を付け直し、同じ誤りに基づく 2 つ目の主張も撤回しました。どちらの誤りも計算ではなく定義、一方は単位、もう一方は期間にありました。
だからこそ「各グラフがクエリを表示する」という設計は、グラフそのものより重要です。ダッシュボードの正しさは、月や訪問者や売上の行をどう定義するかで決まります。ローンチへの返信では、何人かの BI 担当者が、承認済みの指標定義をチームで固定して、正当な 2 つのクエリが食い違わないようにできるかを尋ねていました。今のところ答えに一番近いのは、コネクタ経由のセマンティックモデル対応です。
共有された Claude Dashboard では誰が何を見るのか?
コネクタを使うダッシュボードでは、閲覧者それぞれが自分のアクセス権でクエリを実行します。Anthropic の広報担当は The New Stack にこう答えています。「共有すると、デフォルトでは各閲覧者自身の接続がクエリを実行するので、すでにアクセス権のあるデータしか見えません。」共有に関するヘルプページも同じで、「閲覧者がデータソースにアクセスできない場合、アーティファクトのその部分にはデータの代わりにエラーが表示されます」とあります。同じリンクを開いた 2 人が違う数字を見ることもあるわけです。権限は守られますが、全員が同じグラフを見ているはずの会議は成り立ちにくくなります。「デフォルトでは」という言い方は別のモードがあることを示唆していますが、それを説明したページは見当たりませんでした。
公開リンクについては、Anthropic 自身のページ同士で食い違いがあります。ローンチ記事は、ダッシュボードを「管理者が許可していれば、リンクを知っている全員と」共有できると書いています。管理者ガイドには「接続済みアプリを使うアーティファクトや、Claude に質問するアーティファクトでは『Anyone with the link』は使えません」とあります。別の画面についてですが、Claude Code のドキュメントは、公開リンクを開いた外部の人は「ライブ部分を除いたページを見る」としています。コネクタを使うダッシュボードについて安全な読み方は、ライブ部分は組織外の人には届かない、というものです。また、共有アーティファクトを開くにはリンクの有無にかかわらず閲覧者に Claude アカウントが必要です。
ファイルベースのダッシュボードは逆のケースです。今回のダッシュボードでは共有メニューに「Anyone with the link」が出ていて、Claude は CSV がソースとして添付されていると指摘しました。「ダッシュボードを開ける人は誰でも、そのファイルも読めます。」エクスポートからダッシュボードを作って広く共有すれば、エクスポートを共有することになります。
Claude Motion とは何か、なぜ動画ではなくコードなのか?
Motion が作るのはアニメーションで、実写映像ではありません。Anthropic のヘルプ記事によれば、「Claude Motion は動画生成モデルを使わないため、リアルな映像や人物は作りません。各アニメーションはコードなので、単語や数字、タイミングといった細部を 1 つ変えても、ほかはそのまま残ります」。編集は依頼(「Change the Q3 number to 18%」)かエディタで行い、書き出しは MP4 です。記載されている形式はこれだけです。Anthropic は連携先として Adobe、Descript、HeyGen、Higgsfield、invideo、Luma AI、Runway を挙げています。
Anthropic のデザイナー Nate Parrott は X で、Opus 5.5 がすでにアニメーション付きの解説やデータ可視化を得意としていることに人々が気づいたから Motion が生まれ、チームは「その上に軽い UI を載せた」と説明しています。The New Stack によると、開発者は以前から Claude Code と Remotion などのフレームワークで似た動画を作っていました。Motion はそれを Claude アプリに持ち込み、ターミナルを開くことのない人にも使えるようにしたものです。
Motion は試せませんでした。Max プランで選べたアーティファクトのテンプレートは Docs、Slides、Design、Dashboard で、Motion はありませんでした。最大の長さ、解像度、フレームレート、音声、字幕、どのモデルがアニメーションを書くのかといった基本的な点もドキュメントには書かれていません。頼る前に確認しておきたい点が 1 つあります。Claude API では、コード実行サンドボックスで Claude が作り Files API でダウンロードした動画ファイルに C2PA の Content Credentials が付きます。Anthropic の表示ポリシーは、Claude アプリで作られたファイルも「対応している場合」は対象にしています。Motion の書き出しがそこに含まれるかはどこにも書かれていません。含まれるなら、Anthropic 自身のドキュメントによれば、動画編集ソフトに渡す途中でファイルを再エンコードしたりメタデータを削除したりするツールは、その Credential を消してしまいます。
Claude Dashboards と ChatGPT のデータエージェントを比べると?
OpenAI は 1 か月早く同様の機能を出しています。ChatGPT Work のデータエージェントは、ほぼ同じデータウェアハウスに接続し、「共有できるインタラクティブなダッシュボードを作り」、「クエリには接続アカウントの既存の権限が適用され、テーブル、行、列単位の制限も含まれます」。Power BI や Tableau など既存の BI ツールの中にダッシュボードを作ることもできます。違いは何を公開するかにあります。OpenAI のヘルプ記事によると、サイトとして公開したダッシュボードでは「分析に使ったデータが公開サイトにコピーされます」。Claude のコネクタを使うダッシュボードは、データをアーティファクトにコピーしません。何が読み込まれるかは閲覧者ごとのアクセス権で決まります。
どちらかが一方的に優れているわけではありません。OpenAI の方式は全員に同じ数字を見せ、責任を公開する人に負わせます。Anthropic の方式は権限を保つ代わりに、「同じダッシュボード」が人によって違う意味を持つことになります。ファイルをソースにすると、ファイルがダッシュボードと一緒に移動するので、Claude は OpenAI 側に寄ることになります。
Claude Dashboards や Claude Motion はもう使うべきか?
Dashboards は Anthropic が説明しているとおりの用途、つまり普段ならチケットを切るような手早い質問に使い、各グラフはクエリの下書きとして扱ってください。共有する前に Sources パネルを開き、説明を読むこと。期間がいつ完了と見なされるか、各カウントの単位は何か、データ自体は日付で変わらないのに今日の日付に左右される部分がないかを確認してください。今回のテストでは、問題がデータの中に見えていればモデルはうまく対処し、見えていなければ見逃しました。そして私が尋ねるとすぐに、その抜けを率直に認めました。
ファイルベースのダッシュボードは、そのファイルを共有する範囲より広く共有しないこと。そして、アクセス権が人によって違う場で、コネクタを使うダッシュボードを唯一の正解として扱わないことです。
Motion は、これが狙っているような解説動画をすでに作っている Team と Enterprise のユーザー向けです。私が面白いと思うのはアーキテクチャのほうです。Claude がアニメーションをコードとして書くので、間違った数字を周りをすべて作り直さずに直せます。ダッシュボードの誤りを見つけられたのも同じ性質のおかげです。出力が、読めるものになっているのです。